パリからの便り
パリからの便り、OB 吉田進さんから便りが届きました。
☆「おお美しきわが祖国よ」ローマ歌劇場で大合唱
今年はイタリアが独立統一して、ちょうど150年目に当たります。
それを記念して、昨夜(3月17日)ローマ歌劇場で、ヴェルディのオペラ 《ナ ブッコ》が上演され、フランスのテレビでも中継されました(指揮リッカルド・ムーティ、主役レオ・ヌッチ)。《ナブッコ》は、西暦以前にエルサレ ムを攻略した、バビロニア王ナブコドノゾールの話です。
この中に、バビロニアで奴隷となったユダヤ人たちが祖国を思って歌う、《行け、わが想 い よ、金色の翼に乗って》という大変有名な合唱があります。
初演当時(1842年)、イタリアはオーストリアの圧政に苦しんでいたため、この歌は以 後イタリア人の愛国歌となりました。今回《ナブッコ》が、独立統一150周年記念に上演されたのは、こういう事情があるからです。しかし、南 北分 割問題や、ベルリスコーニ大統領のスキャンダルなどで揺れるイタリアで、観客はどういう気持でこの公演に接するのでしょうか。
《行け、わが想い よ、金色の翼に乗って》が歌われると、予想された通りの大喝采。
「アンコール!」の声が止まないので、指揮者ムーティはとうとう手を上げて聴 衆を 制しました。さて音楽の続き、と思いきや、ムーティはくるりと客席の方を向いて、「文化というものを大切にしないと、舞台上の人々のようなことに なるんですよ」と、国の文化政策をやんわりと批判、今度は出演者も含めた大拍手が巻き起こりました。そこでいよいよ舞台再開というタイミング で、 ムーティは再び観客側を振り返り、「それじゃ皆さん、ご一緒に歌いましょう。テンポに気を付けて下さいよ」と、客席に向かって指揮、会場全体の大 合唱となり、舞台上の合唱団も涙を流しながら《行け、わが想いよ、金色の翼に乗って》を歌いました。祖国が危機にある時、こうして皆が声を合 わせ ることこそが大切なのだと、僕は感動していました。 〔3月18日付〕 吉田 進
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